TOMOIKEプロデュース 舞台「ヤミイチ」感想

「ヤミイチ」すごくよかったです。。

友池さんの舞台面白くてでもちゃんとテーマと伝えたいことがあって好きです。

 

登場人物が本当に魅力的というか、各々抱えてるものがありそうでした。

僕なりに感じたそれぞれの登場人物のことを考察(?)したいと思います。

 

※注意※

・ネタバレあります。嫌な方はごめんなさい。

・平瀬さんが好きで見に行った舞台ですが平瀬さんにスポットを当てた感想ではないです。でもめちゃくちゃ可愛くて素敵でした!

・あと主観多いのでそういうの苦手な人もすみません。

 

 

主人公

舞台「ヤミイチ」の主人公は岡田竜二さん演じる「六原」ですが物語に登場するすべての人間に語られない分も含めた人間らしい闇があり、魅力的で全員が主人公と言っても過言ではない気がします。

サガフ〇ンティアみたいなものです。

 

まぁ僕らはそれぞれ自分の人生の「主人公」ですからね。

(今いいこと言いました。ハート下さい。)

 

 

それぞれの闇

登場人物各々の闇が見える訳ですが、闇との向き合い方、答えもそれぞれであったように感じます。

 

解決する人、解決しないことを選ぶ人、何も出来ない人。

ハッピーだけでは無いのがリアリティあって魅力を感じました。

 

 

広重の闇

過去にいじめを受け引きこもりであった広重。

中三川雄介さんが演じていられました。

イケのメンでした。

 

僕はめちゃくちゃ広重に感情移入しました。

 

カフェでバイトもしているがクビになった彼の闇は「人とうまく接することができない」とのこと。

ヤミイチ内の話し合いではファシリテーターを務めており、物事を進行したり計画したり調整したりみたいなことは上手な模様。

 

しかし彼は独白(ヤミイチの下書き投稿)で「やっと居場所を見つけた」「自分は間違っていない」「千尋が邪魔をする」「千尋はあいつら(いじめてきた奴ら?)と同じ」と書いていました。

 

頭が良くて上手く人と接することの出来ない広重は気付かぬうちに上から目線となりヤミイチメンバーの反感を買ってしまっていたようでした。

 

自分に自信が持てない広重はヤミイチにてユウトに、みんなに認められることで自分自身の存在の欲求を満たしたかったのでしょう。

 

職場に、家族に、趣味に、友人にいくつか居場所があると仮にそのどれかに不和が生じてもやっていけるものですが、

 

恐らく広重には「ヤミイチ」しかありません。

 

100万円持っていて1万円落としてもちょっとへこむくらいですが

1万円しか持っていない状態で1万円落としたら絶望です。

 

広重にとって心の財布に入っている唯一の一万円がヤミイチだと思います。

 

だからこそ唯一の居場所であったヤミイチに誰よりも執着しヤミイチを失った絶望は誰よりも大きかったはず。

劇中では広重は絶望で終わりです。

 

彼はその後どうなったのでしょうか。。。

新しい居場所が見つかっているといいのですが。

 

 

早苗の闇

早苗はシングルマザーのお母さん。ヤミイチでは子育てと仕事の苦悩を語ります。

小川香奈さんが演じていらっしゃいました。

元旦那と別れた理由は旦那の浮気とのこと。

 

独りで働きながら一生懸命子育てをしている早苗。それをヤミイチで打ち明けることで同情と共感を得ます。

 

しかし独白ではストレスから子供に手を挙げてしまっていることが語られます。

相当追い詰められていたのでしょう。

 

最終的に両親との同居を目的とした引っ越しのためヤミイチを辞める早苗ですがその際ヤミイチでの人間関係がストレスであった本音をメンバーにぶつけます。

 

そんなことをしても「本質」の問題は解決しないとユウトに言われた早苗は「それでもインターネットで神経をすり減らすくらいならその時間を子供に使いたい」と言います。

また、子育てと仕事のストレスどこで発散するのかとユウトに問いかけられた早苗は「また探す」と言います。

 

早苗の物語で特に響いたのは同情や共感を得てストレスの発散に利用していたはずの「居場所」がいつの間にかストレスになっていたことと気づけたことでしょうか。

 

私もいくつかの居場所を持っていますが時に煩わしく感じるときが無いわけではないです。それでも「人間関係」は0か100かで簡単に断ち切れるものではないと思います。

グループのうちの1人と合わないとかもありますしね。

自身と子供のためにそれに気づき棄てる選択が出来た早苗の勇気は素晴らしいですね。

 

ただ唯一の居場所であったヤミイチを「ストレス」と言われた広重の心情たるや。。

 

 

千尋の闇

副島美咲さん演じる千尋。美人でヤミイチでの人気も高いです。

彼女の告白する闇は「元カレにDVされていたこと」。

彼女が独白する本音は「優しすぎる今カレ」がいるのに「DVをする元カレ」とも縁が切れないでいること。詰まるところ二股。

彼女は元カレに対し「彼には私がいないと・・・」という感情を持っています。

 

劇中後半、実は今カレがヤミイチ主催のユウトであること。

元カレと復縁する道を選びユウトと別れることを告げます。

 

千尋曰く「会ったら優しかったし反省してもうしないって言ったから」復縁するとのこと。

広重に「また暴力を振るわれる」と言われると「ならまた別れる」と言う千尋

「それじゃ何も前に進んでいない」と言われると

「なぜ進まきゃダメなの?今自分がハッピーなら良くない?」と言います。

「元カレとの関係性を闇だと思っていたことがそもそも間違っていた」と続けます。

 

その後ユウトに別れを告げヤミイチを去っていく千尋

 

千尋自身、前に進んでいないことも元カレがまたDVをする可能性が高いことも分かったうえでその道を選んでいるのでしょう。

「彼には私がいないと」と思う千尋と(おそらく)傷つけてしまうことを繰り返してしまう元カレ。二人の「共依存」は何も進まないまま続いていくのだろうと思われます。

 

ユウトと違い傷つけながらも自分を求める元カレが彼女の導き出した「居場所」だったのでしょう。

一般的に「良くない」関係であっても断ち切れないことってありますもんね。

 

 

吉野の闇

国崎恵美さんが軽快な関西弁を交えてコミカルに演じている吉野。

ヤミイチ内では比較的不人気で、

同じ母という悩みを持つ早苗とぶつかります。

 

彼女はヤミイチメンバーの中で「認めてもらえない」存在です。

広重、早苗、千尋は最終的に失っても間違っていても「居場所」を得ますが吉野は自己開示が出来ず、自分の弱点を見せることができないため中々共感を得られていないようでした。自分も他の人に共感して「ハート」を送らないと認めて貰えないと言われるとバカのひとつ覚えのように上辺だけの共感をするだけの機械と化します。しかし、試行錯誤虚しく建前上の世界ですら認めてもらえなかったように感じました。

最終的に吉野はヤミイチが終わる際に自分はどこに居場所はどこか。と他人に聞いてしまっていました。

 

国崎さんの演技は非常にコミカルで、コントのようで、見ていて「笑いどころ」とわかりやすく最初は会場内に笑いが起こっていました。

しかし、初回公演の際に空回りを続ける痛々しい吉野を見ていくうち、徐々に会場が「笑いどころ」であるはずなのに「笑えない」空気に変わっていきました。凄かったです。

 

吉野は明るいので多少ウザがられながらも表面上の人間関係は築ける気がしますが

この年齢まで不器用な彼女が彼女の求める「本物」に出会えるのかはわかりませんが。

 

 

ユウトの闇

ヤミイチ主催者ユウト。

圧倒的カリスマ性でヤミイチというコミュニティを作っていきます。

 

彼は友人が行う詐欺に対して見て見ぬふりをした自身の闇からヤミイチを作り上げました。

 

ユウトは非常に論理的でプライドが高いように見えます。

彼女の千尋が元カレとよりを戻そうとする時も論理的に説得しようとし、感情で物事を判断する千尋とは相性が悪かった気がします。

また、ヤミイチを辞める早苗に対しても「効率の悪い人生」と切り捨てます。

しかし、その後現れた何かを理解した六原に「人生ってそういうもの」と言われたユウトは「羨ましい」と言いヤミイチを終わりにします。

 

広重に「どうやって自身の闇を解決したのか」と聞かれたユウトは「初めから闇なんてない、交友関係がバレる前に動画を上げただけ」と言って立ち去ります。

 

ユウトの闇は自身の保護のためにヤミイチを作る狡猾さと論理でしか物事を対処出来ない部分だと思います。

 

真優とのやりとりで感じましたがユウトはユウトは人の感情を理解できない頭でっかちではなく、感じとってはいるけどもどうしていいかわからないようでした。

もしかしたらそれを知るためにヤミイチを作ったのかもしれないなと思いました。

 

ユウトは頭が良く自身の闇を理解していたので六原の言葉に羨ましいと言えたのでしょう。

 

社会的欲求も承認欲求も自己実現欲求も満たされていたユウトであっても満たされぬ何かがあるのでしょうか。。

 

 

果穂の闇

吉田爽香さん演じる果穂。

果穂のヒステリックな親がマサノブをセクハラと言い出すことが物語の軸です。

 

彼女はマサノブといい感じになりますがあくまで承認欲求を満たしたかっただけであり恋愛感情はなかった模様。

 

ヒステリックな親と受験がストレスである中、親友の真優が大学の話をするのでさらにストレスをため込んでいたのでしょうか。

 

果穂は真優に「年上の男性の口説き方」を指南します。

果穂にとってそれが真優より優位に立てることだったんでしょう。

 

大学という面で真優にマウントを取られたように感じてしまった果穂は真優にマウントを取るためにマサノブを利用したようです。

 

しかし果穂は本当にマサノブのことを何とも思っていなかったのでしょうか。

 

怖いですね女の子って。僕も目の前に果穂がいれば20万のツボくらいなら買ってしまいそうです。

 

 

真優の闇

みぃちゃんこと平瀬美里さん演じる真優。

 

いわゆる陽キャな彼女は塾講師といい雰囲気であった親友の果穂がある日連絡がつかなくなります。

葵に件の塾講師がヤミイチに参加していることを告げられ、親友の果穂のためヤミイチに参加します。

 

真優は劇場ではヤミイチでの居場所が無くなったマサノブに声をかけ、2人で果穂に会いに行き、真実を明らかにします。

その後、一旦は果穂とぶつかるものの最終的に仲良く過ごしている描写がありました。

日常を取り戻したみたいで何より。。!

 

真優は果穂のために行動しますが果穂に何があったのかも知りません。また果穂に助けてと言われた訳でもありません。

もしかしたら問題を掻き回すだけ掻き回して何も出来なかった可能性もありました。

その癖、独白では「自分も(建前のマサノブを見て)をいいかもと思い始めた」などど言います。

親友のために行動しているはずなのに当事者に現を抜かしそうになる。

深く物事を考えず問題を解決する力も手段も持ち合わせていないのにその場限りの正義感で首を突っ込み自身の行動の目的すら失いかける真優。

 

しかし真優は本当に純粋に果穂を助けたかったのだと思います。

真優の真っ直ぐさが果穂を追い詰めたのかも知れないですが、その真っ直ぐさがマサノブを救ったようでした。

 

無責任な正義感を振りかざすことと、自身が無意識に行っている言動が周りに与える影響に気づけないことが真優の闇ではないかと感じましたが、そんな一面誰にでもありますし、傷つけない人間関係もない気がするので致し方ないとも言える気がします。

 

 

マサノブの闇

果穂の親に娘へのセクハラ行為があったと言われる塾講師のマサノブ。

戸田裕太さんが熱演されてらっしゃいます。

 

マサノブは受験が上手く行かず落ち込んでいる果穂と塾講師と生徒の枠をやや超えたやり取りをしていました。

それを果穂の親にセクハラであると言われます。

 

そんなマサノブはヤミイチにてセクハラ問題を告白し同情と共感を集めヤミイチのメインコンテンツの一つとなるほどの人気を博します。

 

認められることに気持ちよくなり増長したマサノブは、更なる共感を得るためあたかも自身が一方的な被害者であるように語りますが、マサノブがヤミイチに参加していることを葵から聞いた六原の参加によりその立場も失ってしまいます。

 

リアルにもネットにも居場所が無いと感じたマサノブは堕ちかけますが真優の言葉でなんとか踏みとどまります。

 

マサノブの闇は同情を得るために不幸エピソードを都合よく語ったこと、周りに多少なりとも迷惑を掛けているのに自分のことしか考えられないこと。調子に乗ることでしょうか。そのあたりは六原もそうですね。

 

 

葵の闇

本作切っての純情女子こと葵。

彼女の闇はストレートなのでわかりやすいですね、割ってないめんつゆ口に流し込まれた気分です。

 

一応黒幕、ということになるんでしょうか。

果穂の親を唆したのも、六原、真優をヤミイチに引き込んだのも彼女でした。

 

彼女の目的は一つ。

マサノブを自分のものにすること。

 

マサノブを追い詰めて堕とし、孤立させることで自分だけのものにしようとします。

 

彼女はマサノブの彼女ではありませんでした。告白したがフラれました。

しかしマサノブが一度葵と体の関係を持ってしまったがために葵は自分がマサノブの彼女であると錯覚していきます。

 

その後もヤミイチや六原を利用して追い詰めようとし、一度は思い通りにマサノブを堕としかけましたが、それは真優により阻止されました。

 

暴走した葵は(勝手に)与えた役割を全うしない六原に痺れを切らし、六原に全てをバラします。

 

六原に「自信を性の対象として見ている」と迫ります。

このシーンは中々色んな意味でヤバいですがどうしてもう利用できそうもない六原を襲ったのでしょうか。

恐らく、葵には全てを自分の思い通りにしたいという闇があった気がします。

少しでも自分の思い通りにするために六原を襲ったと考えれば自然かと。まぁ知らんけど←

 

一言で片付けてしまえば「メンヘラ」な葵ですが、誰よりも自分に正直で真っ直ぐ行動していたのも事実です。

自身の闇を偽るヤミイチメンバーとは対照的でした。

 

葵が放った「堕ちたあなたと一緒に堕ちる私の愛」は謎の説得力がありました。

 

葵はもちろん倫理的にヤバいのですが、とはいえ素直で真っ直ぐで正直な人が幸せになれるわけではないんだなとも感じさせられました。

 

あと、個人的な話ですが、

葵が「追い詰めれば自分のものになる」というサイコパス発言をした時めちゃくちゃゾクッとしました。

僕も同じことをされて、同じこと言われたことがあったので。。

決してフィクションだけでは無い葵という存在でした。

刺されなくてよかった。。。

 

 

六原の闇

本作主人公六原。

岡田竜二さんの熱演が光りました。

 

良いことを言おうとし、訳の分からない喩えを持ち出す六原。

葵を下心たっぷりの目で見ており、いい雰囲気になった後に風〇に行く六原。

ヤミイチに参加し周りに承認欲求を満たしてもらうことで有頂天となる六原。

人間臭くていいなと思いました。

 

自分が周りにどう見られるかばかりを気にし、周りが見えていない六原はマサノブを理解することも葵に利用されていることも気づきません。

岡田さんの演技が上手すぎるのもあり、マサノブに喩え話をする六原は見ていていい感じにイライラしました。

 

そんな六原ですが、自分が必要とされている人間であると思い込んだそのタイミングで葵の手のひらの上で踊らされていたと知ります。

自分が何も理解していなかった事実に頭をかち割られた六原は辞めていくヤミイチメンバーの前でうなだれ号泣します。

 

その後、(恐らく塾を閉鎖した)六原は引越しの準備に追われていました。

何となく久しぶりにログインしたヤミイチに誰も居ないことを確認し、ログアウトしようとした時に誰かを見つけ「久しぶり」と挨拶し物語は幕を閉じます。

 

六原の闇は理解出来ているつもりになっていたが実は何も理解出来ていなかったことだと思います。

頭でっかちな大人にありがちなものですね。

何故か大人になればなるほど六原のようになってしまうのはどうしてでしょう。

 

 

六原が最後に見つけた人

六原は「久しぶり!なんだよその髪型!」と笑います。

 

敢えて物語ではっきりさせなかった部分でもありましたが髪に触れたのでまぁそういうことでしょう。

 

 

最後に

個人的にはやはり広重への感情移入が凄かったです。勝手に自身を重ねてしまいました。

 

広重メインのプロットもあったようなことを友池さんがカーテンコールで仰っていたので広重メインのスピンオフが見たいですねぇ。

その際は平瀬さんの起用も忘れずに←

 

また、ステージの前方と後方で別の場面を同時に演じるというのが非常に印象的でした。

 

思わず掘り下げて考えたくなってしまうような魅力的な登場人物とストーリーに引き込まれてしまいました。

 

本当に素晴らしい舞台でした。

また是非見れる機会があれば見たいです。

 

色々人間性の考察してるとじゃあ自分は。。なんなんだ??となりますね。

六原りそうなんでこの辺で。

 

オタクの勝手な感想見ていただいた方はありがとうございました。